Q&A

【注】このQ&Aの中で「後見人」と記載されている場合には、成年後見人・保佐人・補助人の総称を指します。

ひとりで後見人になるのが不安です。
法律知識の乏しい私が、後見人になるのは不安なのですが、何かいい方法がありますか。

後見等開始の申立ての際に、後見人の候補者について家庭裁判所に希望を伝えることができます。あなた自身が後見人になるのが難しいと思えば、はじめから法律の専門職である司法書士や弁護士、あるいは福祉の専門職である社会福祉士を後見人の候補者として申し立てて、家庭裁判所に選任してもらうこともできます。またあなたと専門職が複数で後見人になるという方法も考えられます。

この場合、専門職と役割を分担して協力しながら後見業務にあたることになりますので、法律知識の乏しいといった不安も大幅に解消されることでしょう。

後見人になりたいと思ってもなれないことがあるのですか。

後見等開始の申立ての際に、後見人の候補者について家庭裁判所に希望を伝えることができます。しかし、後見人を誰にするかは最終的には家庭裁判所が決めますので、申立人となる親族の方の要望どおりにはならないことがあります。個々のケースにもよりますが、例えば後見人候補者の資質に問題がある場合や親族間に争いがある場合などは、家庭裁判所が候補者以外の第三者(専門職)を選任することがあります。

身寄りのない人でも法定後見制度を利用することはできますか。

後見等開始の審判は、通常、本人、配偶者、4親等内親族の申立てによりすることができるとなっています。しかし、本人自身に後見等開始の申立てをするだけの能力がなく、また本人に後見等開始の申立てに協力してくれるような親族等がいない場合に法定後見制度を一切利用できないとすると、本人の福祉が著しく害されてしまいます。そこでこのような身寄りのない人でも成年後見制度が利用できるように、市町村長による後見等開始の申立てが認められており、年々その申立件数は増加しています。

もしあなたの身近に身寄りがなく判断能力の衰えがあり、きちんと生活できているか心配な方がおられるならば、まずはあなたの地域を担当する「地域包括支援センター」にご相談に行かれることをお勧めします。

法定後見制度を利用するための申立費用が用意できません。

成年後見制度は、制度の利用を必要としている方の生活や財産を守る制度ですから、申立費用は本来利用者本人が負担するべきだと思います。しかし、法令上は、原則として申立人が負担しなければなりません(リーガルサポートは、この点につき法改正を提言しています。)。いずれにしろ、申立費用が用意できないために制度が利用できないとしたら、成年後見制度の趣旨に反します。

そこで、申立費用の負担ができない方の制度として、各市町村の成年後見制度利用支援事業や日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助制度などがあります。

後見人の報酬を払えないときでも成年後見制度は利用できますか。
例えば本人にわずかな年金収入しかなく本人の財産から後見人の報酬が払えない場合には、専門家にお願いすることはできないのですか。

後見人に親族がなることができず、専門家が後見人に選任される例は年々増え続けています。成年後見制度を利用する必要があるのに、経済的な理由で制度の利用ができないというのは大きな問題です。この点、国の政策はまだまだ不十分ですが、助成制度としてリーガルサポートの公益信託成年後見助成基金や各市町村の成年後見制度利用支援事業による報酬助成などがありますので、報酬が払えないからといって制度の利用を諦めないでください。

認知症になった親の不動産を処分(売却、改築、担保の設定など)することはできますか。

認知症により判断能力が不十分となった方は、不動産の処分に関する契約内容を理解し、ひとりで契約を結ぶことは難しいと思われます。認知症が進みひとりで契約を結ぶことができない状態であれば、本人のために家庭裁判所に申立てをして後見人を選任してもらう必要があります。ただし後見人を選任したからといって必ず不動産の処分が認められるとは限りません。

本人にとってその不動産の処分が必要であり、かつ契約条件等が相当である場合に限って認められます。また本人の居住用の不動産を処分する場合は家庭裁判所の許可が必要となります。

後見人が相続税対策や資産運用をしてもいいのでしょうか。例えば、相続税対策のために本人の財産の中から生前贈与を行ったりすることはできるのでしょうか。また本人の預金の一部を株式や国債などで運用することはできるのでしょうか。

後見人は、判断能力が不十分となった本人の生活と財産を守るために選任されるものであり、常に本人の利益を念頭に置いて働きます。その点からすると、将来を見越しての相続税対策は、相続人の利益のために行うものといえ、本人の利益のためのものとはいえません。また、利殖を目的として本人の資産を株式や国債に変えることは、後見人の職務の範囲を超える行為でありできません。

一方で、後見人が就任する以前に本人が保有していた株式等の取扱いについては、現状維持とする静的な管理が基本となりますが、保有することで経済的なリスクはないのかなどを考慮して、慎重に検討すべきでしょう。

後見人でもできないことがあるのですか。

後見人は本人の財産管理や身上監護を行うために広範な代理権を与えられていますが、
(1)医療行為について同意すること、
(2)本人の意思に反して本人の居住場所を指定すること、
(3)本人の身分上の行為(婚姻、離婚、養子縁組など)
について代理をしたり、同意を与えたりすることはできないとされています。

後見人は身元引受人になってくれますか。

老人ホームに入居するときや病院に入院するときには、身元引受人(身元保証人)を求められることがあります。老人ホーム等施設側には、後見人は身元引受人を引き受けてくれるものだとの誤解があることも多いのですが、身元引受人となることは本来後見人の仕事ではありません。

施設や病院側には後見人が身元引受人にはなれないこと、身元引受人を付けなくても後見人が本人の財産から病院や施設への支払いについては責任を持って行うことを説明し、理解してもらうことが一般的です。ただし、家族や親しい親族が後見人であるときは、家族や親族などの立場で、後見人が身元引受人を引き受けるのであれば、問題は生じないでしょう。

後見人が選任されるまで何か月も待ってはいられません。何か良い方法はありませんか?

後見人が選任されるまでには多少の時間を要します。特に後見人や保佐人を選任するにあたっては通常、医師の鑑定を必要としますので、申立てから3か月前後の期間を要してしまうこともあります。

そこで、差し迫った事情があって裁判所が認めた場合、後見人が選任されるまでの間、一時的に財産を管理する「財産管理者」を選任してもらう方法があります。ただし、財産管理者は後見人ではありませんので、できることは限られています。通帳を保管したり、普通預金を払い出して施設利用料等の支払いをしたりすることはできますが、定期預金を解約したり、高額な入居金を支払って老人ホームに入居する契約をしたりするには、家庭裁判所の許可が必要になります。

知的障がいのある親族が多額の借金をしていて心配です。

まずは債務整理が必要です。借金返済のために借金をしたり、周りの方があわてて立て替えて返済したりせず、司法書士等の専門家にご相談ください。

そして、今後、返せない借金をしないように、また毎月の生活費を計画的に使うようにご本人とよく話し合われた上で、成年後見制度を利用して、法律上の権限をもって、生活を支援する後見人を決めておくという対応が考えられます。

知的障がいのある子が消費者被害にあって困っています。

知的障がいがあるために、悪質な勧誘であることが判断できずに高額な商品を買わされる被害にあったり、自ら店に出向いて必要以上の物を買ってしまったりすることがあります。そして、それが原因で生活費を使い果たし、多額の借金につながることも少なくありません。

今後も継続的に被害にあうことも予想されますので、お子さんとよく話し合われた上で、保佐人(あるいは判断能力の程度に応じて補助人)を選任して、まずは不要な契約をしても取消ができる環境を作ることが大切です。また、保佐人の選任を待っている間に被害にあう危険があれば、保佐人が選任されるまでの間、一時的に財産を管理し、消費者被害にあっても契約を取消すことができる権限のある「財産管理者」を選任してもらうことができます(保佐命令といいます)。

さらに、すでに多額の債務を抱えているのであれば、その債務を整理することも必要になります。

配偶者の財産(年金)を第三者後見人が管理することになりました。私の生活費はどうなりますか。

夫婦はお互いに協力して生活することが求められていますから(扶養義務といいます)、今まで通り、日常生活に必要なものは、おふたりの年金から支払ってかまいません。 例えば、あなたの国民年金は預金に回し、一方、あなたの生活のために、本人の厚生年金や預金だけを使うというのは問題がありますが、成年後見制度を利用したからといって、基本的にはこれまでの生活を大きく変える必要はありません。

独り暮らしの高齢の親が消費者被害にあわないか心配です。

不必要なリフォーム工事を契約させ多額の代金をだまし取るリフォーム詐欺や、一度契約した人にいくつもの業者が高額な商品を売りつける次々販売など、高齢者を狙った悪質商法が横行しています。

消費者被害を防ぎ、あるいは被害を最小限にくいとめるには、成年後見制度を利用して、不必要な契約は取り消すことができる環境にしておくことが必要です。後見人になる人は遠くにいる家族でも構いませんが、単に後見人を選任するだけでは問題の解決にはならないでしょう。

同居の親族等本人の状況を身近に見守る人がいない場合、高齢者の抱える問題を総合的に受け付け、適切な支援につなぐ役割を負っている地域包括支援センターや、日常的な金銭管理等の援助を行ってくれる日常生活支援事業といった社会福祉協議会のサービスがありますので、これらを利用して、本人の状況の把握に努めることが必要です。

私には身寄りがなく、将来認知症になったり体が不自由になったりしたときのことが心配です。それから、自分が死んだときの葬儀や納骨のことも気になります。

将来、判断能力が十分でなくなったときの生活や財産管理を法的に支援する人を、元気なときにあらかじめ決めておくことができます。これを任意後見契約といいます。また、判断能力が十分であっても、病気や怪我あるいは入院したことにより、あなたご自身で財産管理や生活費・医療費の支払いなどができないときのために、それらを代理してもらうための任意代理契約を任意後見契約と一緒に結ぶことができます。

さらに、死後事務委任契約といって、あなたがお亡くなりになったときの葬儀や納骨、官公署への届出といった事務を依頼しておく契約もあります(契約の内容によっては、できない事務もあります。)。 いずれもあなたの生活や大切な財産の管理を任せる契約ですから、たとえ専門家であっても慎重に検討して、信頼のおける人と契約しましょう。

私の配偶者は認知症で財産を管理することができませんので、私の身に何かあったときのことが心配です。

あなたに万が一のことがあったときに備えて、遺言書を作成して、財産の分け方と遺言執行者(遺言に基づいて、実際に財産を分ける手続をする人)を決めておくと良いでしょう。このような遺言書を作成しておけば、他の親族の関与がなくてもあなたの遺言書に基づいて財産を分けることができます。

また、あなたの身に何かあった時に備えて、今から配偶者のために後見人の選任手続きをしておくと良いでしょう。

さらに、あなた自身は、あなたの信頼できる人と任意代理契約と任意後見契約を結んでおくと良いでしょう。事前に契約で、あなたが気になっていること、してもらいたいことなどを伝えておけば、あなたが入院したり、意識がなくなったりしたときには、その任意後見人があなたに代わって、あなたの希望に沿った財産の管理や入院費の支払等を行ってくれます。 任意後見制度と法定後見制度と遺言を組み合わせて、おふたりの生活と財産を守ることができます。

知的障がいのある子の生活が心配です。私の預金をきちんと子のために使ってもらいたいのですが、何か良い方法はありますか?

お子さんのために、法定後見制度を利用し、これと併せて、あなたは、任意後見制度を利用すると良いでしょう。任意後見契約で、蓄えた預金の使い方について取り決めておけば、あなたに万が一のことがあっても、任意後見人があなたと取り決めたことに従って、預金をお子さんのために使ってくれます。

病院のソーシャルワーカーです。同居の親族から身体的虐待や経済的虐待を受けている患者さんがいて困っています。

まずは患者さんが住んでいる地域を担当する「地域包括支援センター」に相談してください。行政担当者を含めた関係者や専門家によるケア会議の中で、ご本人の支援について検討します。そして、虐待している方も何かしら問題を抱えている場合があるので、その親族に対してもどのような支援が必要か検討します。

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