りーがるーブログ

[2025/07/07] 報告

​公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート福岡支部  第26回通常総会前研修レポート

公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート福岡支部
第26回通常総会前研修レポート
 
                                    
 
 令和7年5月17日(土)JR博多シティにおいて、リーガルサポート福岡支部第26回通常総会が執り行われました。その総会前研修の第1講についてレポートします。
 
 第1講では「成年後見業務における司法書士への期待」と題して、元裁判官で現在は東京経済大学教授の始関正光氏による講義が行われました。
 
 まず初めに始関教授と司法書士業務の関わりについてのお話がありました。
 始関教授と司法書士とのかかわりは長く、始関教授が法務省民事局在勤中に現行民事訴訟法の制定作業に従事されていた時に「登記研究」の座談会で本人訴訟支援をしている司法書士と同席なさったことに始まり、リーガルサポート創設にも関わってくださったということでした。
 裁判官に復帰されて退官された後も、リーガルサポートの業務審査委員に就任されており、現在も司法書士業務と深いかかわりをもっておられます。
 
 次に、「登記業務から訴訟業務・成年後見関係業務等への業務拡大を勝ち取るに至る先人の努力」と題して、司法書士業務拡大の歴史全般を振り返るお話がありました。
 過去に、裁判書類作成だけでは本人訴訟支援はうまくいかないということで、本人に付き添って法廷まで足を運んできた多くの司法書士の実績の積み重ねがあった。そして、司法制度改革の波に乗って精力的に活動した日司連の執行部の皆さんの働きがあった。その双方があって初めて簡裁訴訟代理等関係業務の獲得が実現に至ったのだという話を通して、業務拡大には、日頃からの実績の積み重ねとチャンスが来た時に機敏に対応することが重要だということを主張されました。
 
 それから「司法書士が裁判所から最も頼りにされるようになったのはなぜか」と題して、成年後見制度と司法書士についてのお話がありました。
 昔は成年後見等業務を行っている司法書士はわずかであった。しかし、高齢化社会を迎え、成年後見制度の法改正や介護保険制度の導入等がなされたことによって、成年後見等業務の需要が増えることを見込んでのリーガルサポート設立が、司法書士の後見等業務の支えとなり、業務拡大に寄与してきた。
 リーガルサポートは、①充実した研修システムによって人材育成をし、その人材を裁判所に推薦することができ、裁判所による業務監督に加えて、②リーガルサポートによる会員への業務監督をする事ができる機能を持った組織である。
 裁判所の一番の関心事は後見人等に選任された者が適切に業務を行えるかということと、不正を働かないかということである。
 近年においては、本人の過去の行動や考え、本人の意思を尊重することが後見等業務において重要であるという流れになってきている。
 本人の意思決定支援を考慮しない古い考えのままでは、本人やその家族や施設からの苦情が出ることもある。しかし、リーガルサポートの研修を受けて最新の情報を取得しているリーガルサポート会員であれば、そのようなことも起こりにくい。
 また、リーガルサポートの業務監督を受けているリーガルサポート会員の司法書士は裁判所にとって信頼できる存在なっている。
 つまり、司法書士はリーガルサポートが持つ上記①②の機能等によって支えられているので、裁判所からの信頼を得、一番多く選ばれる理由となっているのである。
 
 以上の話を受けて、以下の三つのテーマでお話がありました。
 
〇「成年後見制度利用促進のための運用改善における司法書士への期待」
 成年後見制度利用促進のために平成29年3月24日に第1期成年後見制度利用促進基本計画が、令和4年3月25日には第2期成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定された。この計画における運用改善の項目は多岐に渡っているが、その中心的なものは地方自治体による高齢者・障がい者の権利擁護や、保険・医療・介護等の分野と成年後見等業務との連携の強化である。そのために基本計画においては中核機関を設置し、マッチング・後見人等の支援・後見人等の育成などを実施することとしている。
 成年後見制度を利用するためには、中核機関の機能の発揮が必要であるところ、そのためには各自治体に動いてもらわなければならない。自治体を動かすためには、成年後見等業務を行っている専門職である司法書士や弁護士が協力して、中核機関の機能充実がなぜ必要なのか、それによってどう良くなるのかといったことを自治体に強く働き掛けていくことが重要であり、それを期待している。
 
〇「来る制度改正への対応における司法書士への期待」
 第2期基本計画では、成年後見制度そのものの見直しもとりあげられ、審議が始まっている。
・成年後見人等の報酬の問題。
・成年後見等は、審判が確定すれば本人が死亡するまで継続するとされてきたが、後見等が不要な事態になったら、本人の能力が回復していなくても終了とするか。
・任意後見について、任意後見監督人選任を不要とする形態を設けるか。設けるとすればどのような場合に設けるのか。
などの検討が進められている。この法制審議会には日司連会長やリーガルサポートの理事も参加している。最も多くの後見等業務を受任しているリーガルサポートの知見を結集して、この審議をバックアップしていってもらうことを期待している。
 
〇「未成年後見における司法書士への期待」
 未成年後見業務は、財産管理よりも身上監護に重きを置く点で成年後見等業務とは大きく異なる。未成年後見は、未成年者をいかに育成するかということが大事な業務だからである。とはいえ、専門職が未成年と生活を共にすることは難しい。
 その点、平成23年の民法改正によって未成年後見人を複数とすることが可能になったので、未成年者と共に生活する者が何らかの理由で財産管理をすることができない場合に専門職が財産管理をするということになると思われる。この形態であれば、今まで培ってきた成年後見等のノウハウが生かせることも期待できる。
 未成年後見の未来を切り開いていくことを期待している。
 
「おわりに」として、次の事を語られました。
 成年後見制度は、運用上も法制上も大きな変換期を迎えている。これまで成年後見等業務に深くかかわってきた司法書士が、その知見を存分に生かして運用・法改正に積極的に関わり、また未成年後見においても活躍することが成年後見制度・未成年後見制度の双方に寄与するとともに、司法書士の社会的地位を一層高めることになると期待している。
 
 ―最後にー
 「信頼を得るには長い努力が必要だが、信頼を失うのは一瞬である。」というお言葉が心に残りました。
 始関教授のお話を伺って、司法書士業務の拡大とその質の向上に関わってくださった方々や諸先輩方に感謝するとともに、先人のみなさんの努力によって切り開かれた道が閉じられることの無いよう、後に続く我々も努力を続けなければならないと思いました。
 
  • 行政・福祉関係の職員のみなさまへ無料同行訪問相談のご案内
  • 会員名簿
  • りーがるーの部屋
  • 私たちができること
  • 無料電話相談 お問い合わせはお気軽に 092-738-7050
    受付時間
    月曜日~金曜日13:00~15:00
    祝祭日、年末年始、盆休日を除く
  • 無料面接相談 お電話でのご予約 092-738-1666
    相談時間
    毎週水曜日13:00~15:00のみ
    受付時間
    月曜日~金曜日13:00~16:00 祝祭日、年末年始、盆休日を除く
    メールでの予約申し込み
  • リーガルサポートふくおか

    〒810-0073
    福岡市中央区舞鶴三丁目2番23号
    (司法書士会館内)

  • 福岡県司法書士会

ページの上へ